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ニュースレターNo.1 「組成物実施例の書き方 No.1」

<概要>

初回は、特許明細書に記載する実施例について書いてみます。

単に実施例と言いましても、比較例を含めて、この記載には十分な注意が必要です。将来、米国等の外国に出願する場合にはベストモードの記載を義務付けられますし、折角、実施列と比較例を記載したのに十分に発明を説明できず、かつ比較できないなんてことになってしまったら何の意味もありません。

そこで、今回は二成分系及び三成分系の組成物について、いくつかの例を挙げて実施例の記載方法を検討してみます。

1. 特許請求の範囲には、
「成分A: 30〜60質量部及び成分B: 70〜40質量部の合計100質量部を含む組成物」
と記載されている。

この場合、実施例として、まず、この発明の最良の結果を生ずる実施例を挙げる必要があります。例えば、成分Aが50質量部であり、成分Bが50質量部である組成物の実施例です。加えて、成分Aの配合量がその上限近傍であって、かつ成分Bの配合量がその下限近傍の組成物の実施例、例えば、成分Aが60質量部であり、成分Bが40質量部である組成物の実施例、並びに成分Aの配合量がその下限近傍であって、かつ成分Bの配合量がその上限近傍の組成物の実施例、例えば、成分Aが30質量部であり、成分Bが70質量部である組成物の実施例を挙げることが必要です。これら限界域付近の二つの実施例を記載しておかないと、特許請求の範囲に対するサポート要件不備と言うことで拒絶理由になります。その際、成分Aが50質量部であり、成分Bが50質量部である組成物の実施例及び発明の詳細な説明の記載に基づいて、特許請求の範囲記載の成分A及び成分Bの配合量を著しく狭めなければならないと言う結果になります。また、発明の詳細な説明に成分A及び成分Bの適切な配合量の記載がない場合、例えば、「成分Aの配合量の上限は60質量部、下限は30質量部であり、かつ成分Bの配合量の上限は70質量部、下限は40質量部である」としか記載がない場合には、実施例の配合量そのもの、即ち、成分Aが50質量部であり、成分Bが50質量部である組成物に限定しなければならなくなると言う事態も生じかねません。こんなピンポイントの配合量で特許を取得しても何の意味もありません。そんなことあるわけがないと思われるかもしれません。しかし、そのような事例がたくさんあるのです。実施例を明細書に記載する時にちょっと注意していれば、このようなことは未然に防ぐことができるのです。

実施例だけを記載するのではなく、当然、比較例も挙げなくては十分とは言えません。成分Aが上限を超えかつ成分Bが下限未満である比較例、例えば、成分Aが70質量部であり、成分Bが30質量部である組成物の比較例、並びに成分Aが下限未満でありかつ成分Bが上限を超える比較例、例えば、成分Aが20質量部であり、成分Bが80質量部である組成物の二つの比較例があれば十分です。加えて、成分Aのみ及び成分Bのみの比較例があれば完璧です。

以上の実施例及び比較例により、この発明の効果を十分に説明でき、かつこの発明の効果を第三者も容易に理解し得るはずです。


2. 特許請求の範囲には、
「成分A: 30~60質量部及び成分B: 70~40質量部の合計100質量部を含む組成物において、成分A及び成分Bの合計100質量部に対して、成分C: 100~200質量部を更に含むことを特徴とする組成物」
と記載されている。

この場合も、実施例として、まず、この発明の最良の結果を生ずる実施例を挙げる必要があります。例えば、成分Aが50質量部であり、成分Bが50質量部であり、かつ成分Cが150質量部である組成物の実施例です。そして、成分A及びBの配合量を夫々50質量部に固定した状態で、成分Cの配合量を上限近傍、例えば、200質量部、及び下限近傍、例えば、100質量部に振った実施例を記載します。そして、比較例として、成分Cの配合量が上限を超える組成物、例えば、250質量部、及び下限未満、例えば、50質量部である組成物の比較例を記載します。こうしておけば、成分Cの発明の効果に与える影響が明確に把握できます。成分Cが発明の特徴成分である故に、これらの実施例及び比較例は最低限必須です。このように成分Cの配合量の影響を見るときに、成分A及びBの配合量も同時に変えてしまっている実施例及び比較例が記載されている明細書をしばしば見受けます。これは最悪です。これでは、はたして成分Cの配合量の影響なのか、成分A又はBの配合量の影響なのか、全く分からなくなってしまうからです。そんなことするわけがないとお笑いになるかもしれません。しかし、いろいろな公報を当って実施例を見てみて下さい。結構、そんな実施例も多いものです。

加えて、成分Aの配合量が上限近傍であり、かつ成分Bの配合量が下限近傍である組成物、例えば、成分Aが60質量部であり、成分Bが40質量部である組成物、並びに成分Aの配合量がその下限近傍であって、かつ成分Bの配合量がその上限近傍の組成物、例えば、成分Aが30質量部であり、成分Bが70質量部である組成物の夫々に対して、上記のように成分Cの配合量を100質量部、150質量部及び200質量部とした実施例、並びに成分Cの配合量を50質量部及び250質量部とした比較例が必要です。また、成分Cの配合量を100質量部、150質量部及び200質量部として、成分Aが70質量部であり、成分Bが30質量部である組成物の比較例、並びに成分Aが20質量部であり、成分Bが80質量部である組成物の比較例があれば完璧です。

そんなにたくさんの実施例や比較例を実行する時間的、金銭的余裕なんか、出願時にはないとおっしゃるかもしれません。確かに、その時点ではその通りかもしれません。しかし、審査段階で拒絶理由通知が来たとき、特許権になっていざ権利行使をしようとしたとき、何故、出願時にもっと丁寧に実施例及び比較例を記載しておかなかったのだろうと必ず後悔するのです。折角、出願するのですから、あと少し頑張って実施例及び比較例の種類や数は完璧にしておきたいものです。国内優先権で追加することも可能です。本来、発明が完成したということで特許出願をしようと考えているわけですから、出願の時点で、この程度の実施例及び比較例は、既に実施されていなければいけません。もし、実施例及び比較例が十分ではないと言うことが多々あるのなら、それは実験のやり方そのものにも問題があるのではないのでしょうか。


次回は、4成分以上を含む組成物の特許請求の範囲の記載と実施例及び比較例の書き方について書きたいと思っております。ご期待下さい。

以 上

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